「犬肉」の消費が急増するインドネシアの衝撃 バリ島だけで年間7万頭が食用に

東洋経済オンラインからです。

http://toyokeizai.net/articles/-/167296


「犬肉」の消費が急増するインドネシアの衝撃

バリ島だけで年間7万頭が食用になっている


2017年04月14日


ほかのアジア諸国では、動物愛護や衛生面などの理由から減っているが、インドネシアでは近年、犬肉食が増えている(写真:Kemal Jufri/The New York Times)

経済成長に合わせて需要も増加

ここはインドネシアの首都、ジャカルタの東部にあるレストラン。パルリン・シティオは空になった皿を前に満足そうにいすの背にもたれかかった。「リチャリチャ」という、スパイスを効かせた犬肉のインドネシア料理を食べ終わったところなのだ。


携帯電話販売業を営むシティオは言う。「最低でも週に1度は食べる。ここのはおいしいし、新鮮なんだ。体が温まるし、血行がよくなる」。


犬の肉を食べる習慣のある国はインドネシア以外にもいくつかあるが、どこの国でも犬肉ビジネスの実態はあまり知られておらず、消費に関する信頼に足るデータはほとんどない。だが、レストラン経営者や精肉業者、研究者も動物愛護活動家も、インドネシアほど犬肉食が盛んな国はないという点で意見は一致している。


韓国や中国といったほかのアジア諸国とは対照的だ。これらの国々では生活水準が上がってペットを飼う人が増え、動物愛護への意識が高まるなかで犬肉食離れが進んでいる。


インドネシアはといえば、経済成長がまったく逆の効果をもたらすこともあるという好例だ。もともと犬肉食に抵抗感がなかったうえに、経済発展のおかげで犬肉は多くの人々にとって手の届く食べ物になったと、事情に詳しい人々は言う。


「インドネシアだけでなく東南アジア全域で見られるパターンだ」と、獣医学の専門家であるエリック・ブラムは言う。ブラムはバングラデシュの国連食糧農業機関(FAO)で越境動物病緊急センターのチームリーダーを務めており、インドネシアにも9年間、駐在していた。


「東南アジア諸国の一部では、市場へのアクセスが広がり可処分所得が増えるとともに、(犬肉の)需要も伸びた。犬への需要が伸びれば、生産もどんどん増え、取引も増える」


カナダ出身の動物保護調査の専門家でシンガポール在住のブラッド・アンソニーによれば、インドネシアでは今も、よほど特別な機会でなければ牛肉など買えないという人が多くいる。それでも犬や猫の肉ならば手が届くようになっているというのだ。

「まったく実地的かつ農業的な視点から言うと、肉用に犬や猫を育てるのは、スペースにしろ餌にしろ牛を飼育するよりはるかに少なくて済む。だから低価格なのだ」とアンソニーは言う。「生産者にとっても消費者にとっても、主な動機はそうした経済性にある」

温め効果抜群のタンパク源

手頃に買えるという以外に、犬肉には特別な健康効果があると考える人も多い(冒頭のシティオが言った体を温める効果も、食品は温かいエネルギーを持つものと冷たいエネルギーを持つものに分けられるという伝統的な考えによると思われる)。


インドネシア政府は、年に何頭の犬が食用に供されるために殺されたかや、消費量はどの程度かといったデータを集めていない。これは犬が牛や豚や鶏のような家畜として分類されていないからだ。このため、食肉加工や流通、販売、消費に対する規制もない。


インドネシア国民の大多数を占めるイスラム教徒は犬肉を不浄なものと考える傾向がある。ただし豚と違い、イスラムの伝統では犬肉食がはっきりと禁じられているわけではない。


だが動物愛護運動の関係者に言わせれば、犬肉食はイスラム教徒が多く暮らす地域でも盛んなようだ。伝統的に犬の肉はあまり食べられてこなかったバリ島(ヒンズー教徒が多い)でも、同様の傾向があるという。少数民族の中には、バタク人(冒頭のシティオもそうで、キリスト教徒が多い)のように、何世紀も前から犬肉を食べてきた人々もいる。


バリ動物愛護協会の推計では、バリ島だけで年間7万頭の犬が食用にされているという。

バリ動物愛護協会の創設者ジャニス・ジラーディは言う。「私たちの調査では、犬の肉を買っている人の60%は地元の女性だ。犬肉は体を温める効果が最も高く、かつ最も安価なタンパク源だと考えられている」。ジラーディは米国出身で、バリ島に何十年も暮らしている。「黒い犬を食べるとぜんそくなどの病気に効果があると考えられている」。


ジャカルタ市内にある犬肉食専門店「ベツレヘム・レストラン」で犬肉を調理するシェフ(写真:Kemal Jufri/The New York Times)


ジャカルタ動物救援ネットワークのカリン・フランケンは、全国規模での犬肉食に関するデータを集めようとしている。同ネットワークの調査では、ジャワ島中部の都市ジョグジャカルタでは1日当たり215頭の犬が食べられており、首都ジャカルタではその数は少なくとも「2〜3倍に」なると見られるという。犬を都市部に供給しているのはジャワ島のほかの地域で、野良犬を捕まえたり飼い犬を奪ったりして肉に加工しているという。


「国中で取引されている。ジョグジャカルタでは、犬肉料理にご飯が付いてたった8000ルピア(約67円)だ」とフランケンは言う。


ジュニアトゥル・シリトンガの一族は、ジャカルタで1975年から犬肉ビジネスに携わってきた。1週間に食肉処理する犬の数は約20頭。肉はジャカルタ東部の青空市場で売るほか、韓国料理店にも卸しているという。犬はジャワ島の複数の業者から1頭約15ドルで仕入れ、肉を500グラム当たり約2ドルで売っている。


「(犬肉は)牛肉よりも安い」と彼は言う。「犬肉食は地元民族の伝統だ。たいていはキリスト教徒だが、イスラム教徒も薬効を期待して犬肉スープを食べる」

狂犬病が拡散するリスクも

シリトンガの食肉処理場は、ぼろぼろの2階建ての建物の1室だった。殺される前の犬が入れられている部屋には悪臭が充満している。


ジャカルタでは、肉屋が自ら犬を殴打しているケースも(写真:Kemal Jufri/The New York Times)


犬は1頭ずつ、1階にある豚小屋と背中合わせの部屋に連れてこられる。犬は頭部を木の棒で殴打され、意識を失ったところを今度は首を刃物で切りつけられる。血もバケツに集められ、肉と一緒に食材としてレストランに卸される。


ジラーディによればバリ島での犬の扱いはさらに残酷だ。犬は絞め殺されてすぐに解体される。首を絞めるほうが肉が軟らかくなると考えられているのだ。麻袋に入れて殴り殺す場合もあるという。


「インドネシアにおける犬肉ビジネスの残酷さは、韓国やベトナム、フィリピンで長年、反犬肉食キャンペーンをやってきた私にとってもショックなほどだ」と、バリ島に本拠を置く「動物のための変化財団」の共同創立者であるロラ・ウェバーは言う。


インドネシアにも動物の残酷な扱いを禁じる法律はあるが、対象は家畜だけで犬や猫、野生動物は適用外だ。動物愛護団体も、残酷さを理由に犬肉食に反対するのはあきらめるしかなかった。理由は「誰も気にもかけないから」だとフランケンは言う。


その代わり、規制のない野放しの犬肉流通が狂犬病の拡大の原因になりうる点に焦点を絞ることにしたと彼女は言う。バリ島でもほかの地域でも、狂犬病は古くからの大きな問題だ。

「犬肉のヤミ市場が存続するかぎり、インドネシアの狂犬病問題は解決しないだろう」と、アンソニーも言う。


地方自治体は狂犬病の予防接種を実施してはいるが、業者のトラックが犬を運び込むのを止めることはできないと、ジャカルタ市の家畜・動物の衛生問題部署を率いるスリ・ハルタティは言う。


「グレーゾーンの真ん中で動きが取れない状態だ」とハルタティは言う。「伝統文化と動物を愛する人々の対立の構図があり、介入しようにも(法的な)根拠はない」


シリトンガは狂犬病のリスクをほとんど気にかけていない。犬にかまれたことは何十回もあると彼は言う。


おまけに犬をかわいいと思ってさえいる。彼にはルナと名付けたペットの犬がいる。

「この子は食用じゃないよ」と彼は言った。


(執筆:Joe Cochrane記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2017 New York Times News Service



~転載以上~



★署名 インドネシア政府宛て 犬肉・猫肉の取引き禁止を


Indonesia: Stop Dog Meat Abuse

http://www.thepetitionsite.com/561/429/905/indonesia-stop-dog-meat-abuse/?taf_id=25243712&cid=fb_na



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