マクドナルドもウォルマートも、米食品業界がこぞって切り替え、平飼い卵が業界標準に

ヤフーニュースからです。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakamegumi/20160415-00056636/


マクドナルドもウォルマートも、米食品業界がこぞって切り替え、平飼い卵が業界標準に


田中めぐみ  | 環境・社会問題研究者

2016年4月15日 12時52分配信

(写真:アフロ)


 

近年、多くの米食品企業が、ケージ飼い卵から平飼い卵への全面切替を発表しています。昨年マクドナルドが、先月には米最大の小売企業ウォルマートがこの動きに追随したことで、平飼いが業界標準になると見られています。

 

ケージ飼いとは、鶏を檻(ケージ)に入れ何段かに重ねて飼育する手法です。採卵や糞の処理が容易であることから、多くの養鶏業者がこの手法を利用しています。

 

一方、平飼いは鶏を放し飼いで飼育する手法で、米農務省は室内での放し飼いを「ケージフリー」、屋外へのアクセスを可能にしている場合は「フリーレンジ」と定義しています。また、「オーガニック(有機)」認証を得るには、有機飼料による飼育だけでなく、放し飼いや屋外へのアクセスも必要です。

なぜ平飼いに切り替えるのか

多くの企業が平飼いに切り替えている理由は、動物福祉(アニマル・ウェルフェア)への関心が高まってきているからです。近年、欧州を中心にこの概念が主唱され、家畜動物に5つの自由 (1. 飢えと乾き、2. 痛み・ケガ・病気、3. 恐れと苦悩、4. 不快からの自由、5. 正常な行動ができる自由) を与えるべきとする考え方が広まり、消費者や投資家、市民団体が企業に対して対策を要請するようになりました。

 

特に、羽根を広げることもできないほど狭い檻に鶏を閉じ込めるケージ飼いは人道的ではないとして、市民団体が長年にわたり、平飼いに切り替えるよう企業に働きかけてきました。

 

最も対応が早かったのは、2005年に店内で取り扱う卵のすべてをケージフリーに切り替えた大手オーガニックスーパーのホールフーズですが、その後、同社に続く企業はほとんどありませんでした。

 

ところが、2008年にカリフォルニア州で養鶏に関する法案が可決され、羽根を広げられないほど狭い環境での養鶏を2015年以降禁止することが決まると、徐々に企業が動き始めました。特に昨年から今年にかけて、多くの企業がケージフリーへの全面切り替えを発表しています。

 

これまでにケージフリーへの全面切り替えを発表した企業は、マクドナルドやバーガーキング、サブウェイ、ウェンディーズなどファストフード各社、ディスカウントストアのウォルマートやターゲット、ホールセールクラブのコストコ、食品スーパーのクローガーやアルバートソン、食品メーカーのゼネラルミルズ、ケロッグ、コナグラ、キャンベルスープ、レストランチェーンのデニーズやアップルビーズ、コーヒーチェーンのスターバックス、ホテルチェーンのヒルトン、ハイアット、マリオットなど、100社以上に上っています。

 

これら企業の多くは、2025年までに切り替えることを誓約しているため、今後10年以内にケージフリーが米卵業界の標準になると見られています。

実現までの長い道のり

もちろん、実現に至るまでの課題は山積みです。

 

まず、平飼いはケージ飼いよりコストがかかります。昨今は、複数階層の平飼いシステムなど生産性の高い設備も開発されていますが、学者らの調査によると、ケージフリーの運営コストはケージ飼いより23%高く、設備投資を含めると36%高くなるとされています。

 

米農務省によると、現時点でケージ飼い卵の小売価格は1ダース1.03ドル、ケージフリーが2.99ドルと3倍ほどの差がありますから、先行して導入している養鶏業者はコスト差を吸収できているようですが、ディスカウントストアやファストフードでこれほどの価格はつけられませんから、今後企業の要請により切り替えを余儀なくされる養鶏業者が負担を背負うことになると見られます。

 

また、有機認証と異なり、ケージフリーは認証制度があるわけではありませんから、企業ごとに定義や基準が異なり、消費者が混乱する可能性があります。

さらに、ケージフリーであっても、檻がないだけで室内の閉鎖的な環境で飼育されることは変わりませんし、病気や鶏同士の争いなどによりケージ飼いよりも死亡率が高まるとする調査結果も出ています。

ケージ飼いが一般的になった理由

そもそも、昔は平飼いが当たり前だったのでしょうが、現在ケージ飼いが業界標準になっているのは、消費者が安くて安全な商品を求めるようになり、それに応えるべく、企業が効率化を追求したからでしょう。

 

近年になって、アメリカの消費者は食品が作られる背景を知りたがるようになり、ケージ飼いの事実が明らかになると、企業を批判し、対策を迫るようになりました。

 

しかし、利害関係者全員の欲求を満たすような、安くて人道的で効率的で安全な飼育方法などありえないでしょう。どこかで誰か、何かにしわ寄せが行くはずです。

 

日本の養鶏業界でもケージ飼いが一般的ですが、未だ対策を取る企業は出てきていないようです。何年か前に農林水産省がアニマル・ウェルフェア対応を検討したことがありましたが、現在に至るまで何も対策は行われていないようです。

 

ケージフリーに切り替えることですべての問題を解決できるわけではありませんが、少なくとも、アメリカの動向はアニマル・ウェルフェアの観点で一歩前進したといえるでしょう。

 

 

慶應義塾大学商学部卒業後、経営コンサルティング会社アクセンチュア勤務を経て渡米。ニューヨーク州立ファッション工科大学卒業後、米国にて起業。米小売・ファッション市場の調査・コンサルティングを手掛けるが、次第に大量消費社会に疑問を感じ、サステイナビリティの必要性に目覚める。以来、環境・社会問題を調査研究し持続可能な社会の実現に向けて取り組む。ハーバード大学エグゼクティブエデュケーション サステナビリティリーダーシップ修了。米ニューヨーク在住。著書『サスティナブルシティ ニューヨーク』『グリーンファッション入門』(繊研新聞社)、共著書『エコデザイン』(東京大学出版会)、訳書『ターゲット』(商業界)。



~転載以上~



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