高齢者による犬猫の飼育放棄が増加 譲渡の上限設定も

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朝日新聞・sippo|更新|2015/11/30

高齢者による犬猫の飼育放棄が増加 譲渡の上限設定も


広島県では譲渡の際の上限年齢を定めていない。だが大型犬の飼育は高齢者には負担が大きい=広島県動物愛護センター
広島県では譲渡の際の上限年齢を定めていない。だが大型犬の飼育は高齢者には負担が大きい=広島県動物愛護センター

 全国の自治体の動物愛護センターや保健所などに引き取られる犬や猫のうち、高齢者が飼い続けられなくなったとみられるケースの割合が増えていることが、朝日新聞の調査でわかった。このため、飼育放棄された犬猫を新たな飼い主に譲渡する際、高齢者を除外する自治体も増えている。

 調査は犬猫を引き取っている全国112の自治体を対象に行い、全自治体から回答を得た。飼い主から犬猫を引き取る際の理由について、93自治体(うち74は犬猫別に集計)が2014年度分の統計を取っており、うち過去分と比較できる自治体が68あった。

 これを集計すると、14年度はすべての理由の中で、高齢者である可能性が高い「飼育者が高齢・病気・入院(入所)・死亡」の割合が、犬で56自治体、猫でも26自治体で1位だった。

 また、犬について過去分と比較できる55自治体のうち41自治体(75%)で、猫でも52自治体のうち39自治体(75%)で「飼育者が高齢・病気・入院(入所)・死亡」の割合が増加していた。犬猫あわせた統計は61自治体で比較でき、51自治体(84%)で、この理由の割合が増えていた。

 こうした状況に自治体は危機感を強めている。神奈川県横須賀市は「高齢者に譲渡した動物を、本人の健康上の理由から再び引き取らざるを得なかったことがある」。富山市は「飼い主の高齢を理由とする所有権放棄の相談が以前から多数寄せられている」という。

 高齢者によると見られる犬猫の飼育放棄の割合が14年度に68%に達した東京都も「高齢者による飼育放棄の増加傾向に強い問題意識を持っている」といい、都で収容した犬猫を新たな飼い主に譲渡する際の上限を60歳と設定。61歳以上には原則的に譲渡していない。

 同様の取り組みは全国的に広がっており、今回の調査では41自治体で保護犬・保護猫の譲渡について、上限年齢を定めていた。広島県が「高齢者が子犬の譲渡を希望した際には成犬をすすめるようにしている」など、高齢の譲渡希望者には何らかの対応をする自治体も13あった。

 日本人の健康寿命は男性71・19歳、女性74・21歳(13年、厚労省調べ)。一方、犬の平均寿命は14・17歳、猫は14・82歳(14年、ペットフード協会調べ)。つまり65歳以上の高齢者が子犬や子猫を飼い始めれば、途中で飼い主が代わる可能性が高い。そして、高齢者自身で新たな飼い主を見つけることは、容易ではない。

 また飼い主の変更は、特に犬の場合、別の問題も浮上する。東大大学院獣医動物行動学研究室の武内ゆかり准教授は、高齢者が犬猫を飼う際のサポート体制確立の必要性を指摘しつつ、こう話す。

「犬の精神疾患の一つ、分離不安の原因として、飼い主のライフスタイルの変化があげられる。飼い主の変更は大きな変化。高齢者は犬と一緒に過ごす時間が長いと想定され、次に、仕事をしている年代の飼い主にもらわれた時に差が大きくなる。より分離不安になりやすい状況と言えます」

(太田匡彦)

猫の平均寿命は完全屋内飼育であれば15歳を超える。65歳で飼い始めれば、80歳を過ぎるまで面倒を見る覚悟が必要だ=鹿児島県姶良動物管理所
猫の平均寿命は完全屋内飼育であれば15歳を超える。65歳で飼い始めれば、80歳を過ぎるまで面倒を見る覚悟が必要だ=鹿児島県姶良動物管理所


■高齢者への譲渡を制限している自治体
<制限年齢>
自治体

<健康状態や継続飼養してくれる家族の有無など確認>
宮城県、兵庫県、広島県、愛媛県、鹿児島県、札幌市、堺市、函館市、岐阜市、東大阪市、福山市、高知市、宮崎市
<60歳以上>
青森県(1)、茨城県、広島市(2)、旭川市(1)、青森市、宇都宮市(2)、船橋市(2)
<61歳以上>
東京都(2)
<63歳以上>
栃木県(2)
<65歳以上>
愛知県(2)、奈良県(2)、岡山県(2)、山口県(2)、徳島県(2)、福岡県(1)、佐賀県(1)、沖縄県、川崎市、北九州市、前橋市(1)、高崎市(1)(3)、横須賀市(2)、富山市、金沢市、豊橋市、枚方市、姫路市、西宮市(2)、奈良市(2)、下関市、那覇市(2)
<66歳以上>
群馬県、神奈川県、山梨県、大阪府(2)、さいたま市、大阪市(1)、岡山市(2)、高槻市(2)、倉敷市(1)
<74歳以上>
神戸市(4)

(1)後見人やバックアップ体制があれば譲渡可
(2)家族等からの継続飼養の同意または同意書・誓約書があれば譲渡可
(3)猫の譲渡については60歳以上
(4)65~73歳の場合は家族等からの継続飼養誓約書があれば譲渡可

(朝日新聞2015年11月29日掲載)


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